【連載3】歴史的背景

 




 メンタル面を科学的にトレーニングするという考え方は、旧ソビエトが社会主義国家のもと、オリンピックで勝て
(メダルを獲得)という命令が下り、多くの研究者やスポーツ関係者が、勝つための方法を見つけ出したことからだという報告があります。
 つまり、オリンピックで勝つという目的のもとに、メンタル面強化のトレーニングが研究され、オリンピックの大舞台で応用し、
実践と研究を繰り返し、より効果的なメンタルトレーニングというものが出来上がってきました。

 1976(昭和51)年のモントリオールオリンピックでの旧ソビエトや旧東ドイツの素晴らしい成果を見て、アメリカなどの西洋諸国も
メンタル面強化に取り組み始めました。84(同59)年のロサンゼルスオリンピックでは、アメリカがチームにメンタルトレーニングを
導入し、素晴らしい成果を挙げたことが、日本にもメンタルトレーニングを導入するきっかけになりました。
 日本オリンピック委員会(JOC)の心理班による「メンタルマネジメント研究」プロジェクトが85(同60)年に始まり、
日本におけるメンタル面強化の研究や実践に取り組むようになりました。当時は、88(同63)年のソウルオリンピックでの
メダル獲得を目的に研究や実践が行われたのですが、日本のスポーツ界にあるいろんな問題から、メンタル面強化の考え方が
受け入れられませんでした。
 日本では「根性・精神力・気合・スパルタ教育」などの言葉が示すように、コーチたちは、メンタル面の重要性は
認識していたにもかかわらず、どうすればメンタル面強化ができるのかが分からず、昔ながらの、練習を多くするとか、追い込む練習、
スパルタ練習をしてきました。
 また、メンタル面が弱いという責任を選手に押しつけ、コーチの「おまえは精神力がない、どうして力を発揮できないんだ、もっと集中しろ、
気合を入れろ、やる気を出せ、根性をだせ」という言葉だけの指示だけが響いていました。

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宮崎日日新聞掲載 高妻容一氏 著