【連載16】集中力(1) |
日本オリンピック委員会の心理班が、各種目ここ4年間でインターハイや全中のベスト16に入賞したチームの監督998名に調
査をしました。その時、練習において一番大切な真理的スキルは何ですか?という質問で一番多かったのが「集中力」でした。
しかし、その後の質問で、実際に一番重要だと考える集中力のトレーニングはどうしていますか?という質問から、そのトレーニ
ングの方法がわからないために、何もしていないという事実が明確になりました。監督達は、言葉で「集中して練習するんだ」、
「集中力が大事だ」、「気合を入れて練習しろ」などと怒鳴ることは毎日のようにしていても、選手達には「おまえは集中力がたら
ん」、「もっと集中しろ」と集中力のなさを選手の責任にしていたのです。つまり、こうしたら集中力が高まるからこうしなさい、これ
をやることで集中力が高まるよという指導がなされていなかったのです。一部の指導者は、「常に、試合を意識させて、緊張感の
ある状態で連取させています」と言いながら、実は怒り怒鳴りまくって、違う意味での緊張感の中で集中させていたという事実もあ
りました。
スポーツ心理学の理論から話すと、かなり複雑で難しい話をしなければならないので、ここでは、簡単にこのような方法が現場
ではすぐ使えますということを紹介します。たとえば、大リーグで活躍するイチロー選手は、ベンチからネクスト・バッターズ・サー
クルまでいつも同じように歩いて、そこでの動作、打席までの歩き方から打席に入り、バットをぐるりと回す動作までを、打席で「集
中」するために大切な時間、打つための重要な準備の時間だという表現をしています。これは、「パフォーマンスルーティーン」と
いう集中力を高めたり、気持ちを切り替えたり、自分のリズムを取るための心理的テクニックです。
イチロー選手の形ではなく、心の中(考え方)をまねしてみることは、効果的でしょう。
宮崎日日新聞掲載 高妻容一氏 著 |